『とほ』 (とほネットワーク旅人宿の会発行)
2010年05月06日掲 載
「とほ」は相部屋形式のドミトリー型宿を紹介したガイドブックだ。北海道を中心に全国68軒あるが、多くが道内である。施設や営業スタイルは民宿、ゲストハウス、ペンション、ユースホステル風と様だが、共通していることは「男女別相部屋の設定(ドミトリー)」「比較的安価」「お客さん(旅人と呼ばれる)同士の交流がしやすい」「定員が少ない」などが挙げられる。
北海道の旅人の宿と云えばユースホステルであった。しかし、この20年ほどでYHは激減。最近ではその受け皿にもなっているのが、紹介するとほ宿である。1泊素泊まりなら3千円台、2食付でも5~6千円程度だ。利用者は旅の高齢化か、かつてYHなどを泊まり歩いた中高年層が多いと云う。
若者が旅をしなくなった理由について、何度か拙ブログでも書いたが、この「とほ」ガイドの中でも、シェルパ斉藤さんという同い年の旅のオーソリティがこの件について触れている。
「若い旅人が減っているのは、僕たち大人が旅の楽しみを伝えてきれていないからでは。大人の責任でもあり、これから伝えて継承して行かなくてはならない」と述べている。
ネットの普及、社会構造の変化、経済情勢、草食男子化など理由は複合的でいくらでも挙げられるが、「旅の楽しみを大人が伝えきれていない」というシンプルな理由についてはあまり考えたことがなかった。
「とほ」に載っているような宿は旅人同士の交流が盛んなので、否が応でも仲間に引っ張り込まれる。それが厭なら仕方ないが、そういった交流はよほど不快な宿(客とオーナー)でない限り、有意義な出会いである。管理人もあらためて、若者に旅のよさを伝えていかなければならないと思った次第である。
【参考】「とほネットワーク旅人宿」公式HP
『北海道いい旅研究室12』(舘浦あざらし編集 海豹舎)
舘浦あざらし責任編集の「いい旅研究室」が通算12冊目を発行した。前号が昨年1月発行、忘れた頃に出るこのシリーズであるが、最近は間隔が空いており、海豹氏の消息が気になっていた。それにしても、第1号発行が1999年なので、この出版不況の最中、よく続いていると思う。
12号はかなりボリュームアップ、価格も890円と値上がりしているが読みではある。冒頭には北海道廃線地図が、最近のいい旅では鉄道(廃線)記事が増えているが、この手の廃線地図は既に見飽きており、今さらという気がする。海豹氏は鉄道に嵌っているようで、力作だが鉄道に関してはもう少し旅と絡ませた方がよいのでは。
記事は作家の亀和田武氏とのふたり旅。前号は椎名誠氏との対談であったが、編集者の趣味的色彩が強い。そういえば亀和田氏、最近テレビではあまり見かけなくなった。
また、「合併しなかった村を勝手に応援するという企画」で鶴居村を紹介、管理人もご贔屓な村なのでじっくり読ませていただいた。よく書いているが、鶴居の温泉宿3軒紹介の内、ホテルTのことをかなりボロクソに書いている。ニュアンスはわかるが相変わらずである。
意外に面白かったのは北海道が舞台の映画特集。これについては別の機会で取上げたい。
最後に読者投票による人気宿トップ10を紹介
1.ホテル山水(定山渓)
2.銀婚湯(八雲町)
3.湯宿 だいいいち(中標津町養老牛)
4.民宿500マイル(白老町虎杖浜)
5.鹿の谷(上士幌町幌加)
6.滝乃家(登別)
7.中村屋(ぬかびら温泉)
8.山田温泉(鹿追町)
9.ガストホフぱぴりお(屈斜路湖)
9.朝日温泉(岩内町)
いい旅では御馴染みの温泉。管理人もこのうち7軒(宿泊は4軒)訪れているが、あまりにも宿のタイプが違いすぎて同じ土俵で語っていいのか疑問もある。しかし、個人向け宿で、良質な温泉が楽しめるという意味では共通しており、参考にはなるだろう。
いい旅シリーズは温泉ガイドではなく、あくまでも、編集者あざらし氏の独断と趣味であるということを踏まえて読めば面白く、北海道の宿探しに迷っている人にはいい手助けになる本だ。
管理人にとって、温泉ガイド本の師匠は、山渓に居らした故・美坂哲男氏で、氏の誉める温泉は殆どまわったが、あざらし氏の本をバイブルにして回っている人も多くいるので、是非ブレないで続けていただきたい。
【参考】「いい旅研究室9」を紹介した拙ブログ
『札幌から行く日帰り温泉&昼食ごはん』(亜璃西社)
大型連休に突入したが、北海道発の旅行・レジャー関連の書籍を何冊か紹介して行きたい。
最近、0泊2食やランチ休憩など日帰り温泉旅行が注目を集めている。特に北海道は札幌からの日帰り圏に素晴らしい温泉が多く、宿泊をしなくても十分に楽しみことができるのが強みだ。今回、紹介する『札幌から行く日帰り温泉&昼食ガイド』は温泉ガイド本では定評がある亜璃西社の発行。
2,000年から改訂・重刷が続いているロングセラー「札幌からの日帰り温泉221」をリニューアルし、今回、温泉ガイドに加えて、ランチやご当地グルメ、スイーツなど幅広い情報を網羅したガイドブックとした。また、ランチが食べられる温泉施設については、そのメニュー内容や営業時間などについてもしっかり掲載しており、これまでに例のない温泉ガイドとなっている。
ジャンルも、ファームレストランからそば、ラーメン、スープカレー、スイーツなどなど幅広く掲載。さらに、ご当地グルメに加え、パンやドーナッツなどテイクアウトの店も数多く紹介している。
ページをめくってみるとこの出版社ならではのこだわりが伺える。たとえば、源泉掛け流しについては、「源泉度の高い温泉施設」とし、①循環・ろ過していない②オーバーフローしている③飲泉許可申請の有無に関係なく、浴槽への注ぎ口から湯を飲めるを基準にしており、若干の加温や加水、保健所指導により若干の塩素投入している施設を含まれており、現実に即した対応と云える。
また、「湯けむりコラム」ではばん渓温泉「伊藤温泉旅館ひかり温泉」が紹介されている。ここは管理人も泊まったが凄い温泉である。凄さの内容は秘密だが・・・登別の寺院温泉など読みものとしても面白かった。
前回発行されたものと比較してみるとかなり温泉施設が変わっている。名称の変更・経営者の交代・大幅なリニューアル・廃業など様々だが、札幌市内には銭湯型の温泉施設がかなり増えている。また、地方で経営者の高齢化などで廃業が目立つのが特徴だ。
それにしても、ニセコなど1時間半程度であれほど良質な温泉を堪能できる札幌市民が羨ましい限りである。『札幌から行く日帰り温泉&昼食ガイド』、A5サイズに拡大され、見やすくなっている。ドライブには最適なガイドブックである。価格は1,300円と据え置きになっている。
『監獄ベースボール 知られざる北の野球史』(成田智志著 亜璃西社発行)
2010年02月27日掲 載
昨年11月に出版された本だがユニーク且つ貴重な内容であったので紹介をさせていただく。
ファイターズが上陸するまで長く野球不毛の地であった北海道。明治後期に創設された函館オーシャン倶楽部が北海道野球の黎明だと思っていたが、それより20年近く前から野球が行なわれていたのだ。それも刑務所で・・・・・この本はそんな北海道開拓の時代に人知れず集治監で行なわれていた野球と監獄所長について、史実に基づいた著した歴史小説である。
明治中期、月形に北海道開拓のためにあの監獄がつくられた。そこに全国各地から送り込まれた囚人たちは、石炭採掘など過酷な労役に苦しんでいたが、典獄(監獄所長)の大井上輝前は、アメリカ留学で出会ったベースボールとキリスト教を囚人教化に採り入れ、監獄の改良を志すことになった。
国策の犠牲となった囚人たちと、彼らに希望の光を与えた大井上典獄の半生をドラマチックに描いた、異色の長編歴史小説である『監獄ベースボール 知られざる北の野球史』。これまで知ることのなかった北海道開拓と野球の歴史だ。
月形樺戸博物館にはだいぶ前に行ったことはあるが、野球に関する資料は記憶ない。明治中期のころ頃、過酷な環境とはいえ、その後のタコ部屋、強制労働に較べるとまだまだ自由民権の馨りがして多少はよい次代であったのかもしれない。
あとがきの著者の言葉が印象的だ。
「囚人が「人」として扱われることのなかった時代にわずかに射した一筋の光-「監獄ベースボール」に思いを馳せながら。
なお、樺戸監獄に関して来月6日(土)に講演会「樺戸集治監と北海道」が開催される。樺戸集治監が設置された明治14年から大正8年までとその前後、道内ではどのような社会的動きがあったのかを、北海道史のエキスパートである桑原教授が解説する。
テーマ:「樺戸集治監と北海道」
講 師:札幌大学大学院 経済学研究科長 桑原真人氏
日 時:平成22年3月6日(土) 午後1時30分~午後3時
場 所:月形町交流センター「つきあえ~る」
参加料:500円(月形町民は無料)
定 員:50名(先着順)
申込期間:2月3日~3月1日
申込方法:電話またはFAX、ハガキ、電子メールで申込み可能
申 込 先:月形町役場 産業課商工観光係(月形町1219番地)
電話 0126-53-2322
FAX 0126-53-4373
電子メール shoko@town.tsukigata.hokkaido.jp
『北海道化石としての時刻表』(柾谷洋平著 亜璃西社)
2009年03月29日掲 載
相変わらずの鉄道書籍ブームだが乱造の感は拭えない。そんな中、一風変って、筋が入っているのが今回紹介する「北海道化石としての時刻表」だ。
まず、このタイトル、時刻表を「化石」と名付けたように、文化史、時代風俗、交通史・産業考古学視点などから時刻表と北海道について書いているところが面白い。戦前からの古い時刻表を元に、過去のダイヤグラムを遡ることによって、その鉄路と社会の変遷が見えてくる。著者の現地取材も入っているので、なかなか手が込んだ内容だ。
また、第二章では滝川-釧路を結ぶ国内最長普通列車を「最長鈍行阿房列車」として紹介。最終章では、北海道内の駅を擬人化した座談会を登場させるなどなかなか個性的なつくりとなっている。
著者の柾谷洋平氏はこの春まで北大大学院生だった若干24才の若者だが、文体は計算づくなのか、個人的趣味なのかわからないがえらく古典的である。阿房列車と名付けた通り、内田百聞氏の影響が文章からも伺える。また、宮脇俊三氏の大ファンであることも擬人化座談会を読んでいると見えてくる。
鉄道好き(特に北海道)の人ならそれほど驚く内容ではないが、ここまで北海道と時刻表を掘り下げたことには敬服であり、著者のこだわりと愛着が伝わってくる。第三章の「広告の愉しみ」は時刻表の広告から時代を読みとくが、楽しく、高尚な内容だ。
管理人も古い時刻表コレクターであり、そこから時代を垣間見るのが好きである。拙ブログでも古い北海道時刻表をベースに、「激動の1968年、交通公社時刻表で北海道を旅する」と題したものを書いたが今でも多くのアクセスをいただく。また、内田百聞氏と宮脇俊三氏を尊敬しているあたりも共通項なので親近感を覚える。
実は出版元の亜璃西社さんとは親しくさせて頂いているが、編集のI氏より、昨年夏、初めての鉄道もので、この書籍が売れるかどうか相談を受けた。内容を聞いて、似たような趣味の人はいるのだなあと思ったが、詳しく知るうちに24才の若者の方が遥かに筋金入りで、思い入れのレベルが違うことがわかり、直感的に「いけるのでは」と思った。
鉄道書籍のレベルが落ちている昨今、『北海道化石としての時刻表』には、「北海道」・「時刻表」・「産業考古学(鉄道文化史)」と好きな人にはたまらないファクターが三拍子詰まっており、一石を投じることができる。これは道外をターゲットにやれば売れますよと答えた。
聞くところによると、神保町の「書泉グランデ」では追加注文、池袋のジュンク堂では品切れらしい。管理人の勘が外れなかったので、少しほっとしているところだ。
2009年3月発行 1,600円

