『監獄ベースボール 知られざる北の野球史』(成田智志著 亜璃西社発行)

2010年02月27日掲載

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昨年11月に出版された本だがユニーク且つ貴重な内容であったので紹介をさせていただく。

ファイターズが上陸するまで長く野球不毛の地であった北海道。明治後期に創設された函館オーシャン倶楽部が北海道野球の黎明だと思っていたが、それより20年近く前から野球が行なわれていたのだ。それも刑務所で・・・・・この本はそんな北海道開拓の時代に人知れず集治監で行なわれていた野球と監獄所長について、史実に基づいた著した歴史小説である。

明治中期、月形に北海道開拓のためにあの監獄がつくられた。そこに全国各地から送り込まれた囚人たちは、石炭採掘など過酷な労役に苦しんでいたが、典獄(監獄所長)の大井上輝前は、アメリカ留学で出会ったベースボールとキリスト教を囚人教化に採り入れ、監獄の改良を志すことになった。

国策の犠牲となった囚人たちと、彼らに希望の光を与えた大井上典獄の半生をドラマチックに描いた、異色の長編歴史小説である『監獄ベースボール 知られざる北の野球史』。これまで知ることのなかった北海道開拓と野球の歴史だ。

月形樺戸博物館にはだいぶ前に行ったことはあるが、野球に関する資料は記憶ない。明治中期のころ頃、過酷な環境とはいえ、その後のタコ部屋、強制労働に較べるとまだまだ自由民権の馨りがして多少はよい次代であったのかもしれない。

あとがきの著者の言葉が印象的だ。

「囚人が「人」として扱われることのなかった時代にわずかに射した一筋の光-「監獄ベースボール」に思いを馳せながら。


なお、樺戸監獄に関して来月6日(土)に講演会「樺戸集治監と北海道」が開催される。樺戸集治監が設置された明治14年から大正8年までとその前後、道内ではどのような社会的動きがあったのかを、北海道史のエキスパートである桑原教授が解説する。


テーマ:「樺戸集治監と北海道」
講 師:札幌大学大学院 経済学研究科長 桑原真人氏
日 時:平成22年3月6日(土) 午後1時30分~午後3時
場 所:月形町交流センター「つきあえ~る」
参加料:500円(月形町民は無料)
定 員:50名(先着順)

申込期間:2月3日~3月1日  
申込方法:電話またはFAX、ハガキ、電子メールで申込み可能
申 込 先:月形町役場 産業課商工観光係(月形町1219番地)
電話 0126-53-2322
FAX 0126-53-4373
電子メール shoko@town.tsukigata.hokkaido.jp

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『北海道化石としての時刻表』(柾谷洋平著 亜璃西社)

2009年03月29日掲載

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相変わらずの鉄道書籍ブームだが乱造の感は拭えない。そんな中、一風変って、筋が入っているのが今回紹介する「北海道化石としての時刻表」だ。

まず、このタイトル、時刻表を「化石」と名付けたように、文化史、時代風俗、交通史・産業考古学視点などから時刻表と北海道について書いているところが面白い。戦前からの古い時刻表を元に、過去のダイヤグラムを遡ることによって、その鉄路と社会の変遷が見えてくる。著者の現地取材も入っているので、なかなか手が込んだ内容だ。

また、第二章では滝川-釧路を結ぶ国内最長普通列車を「最長鈍行阿房列車」として紹介。最終章では、北海道内の駅を擬人化した座談会を登場させるなどなかなか個性的なつくりとなっている。

著者の柾谷洋平氏はこの春まで北大大学院生だった若干24才の若者だが、文体は計算づくなのか、個人的趣味なのかわからないがえらく古典的である。阿房列車と名付けた通り、内田百聞氏の影響が文章からも伺える。また、宮脇俊三氏の大ファンであることも擬人化座談会を読んでいると見えてくる。

鉄道好き(特に北海道)の人ならそれほど驚く内容ではないが、ここまで北海道と時刻表を掘り下げたことには敬服であり、著者のこだわりと愛着が伝わってくる。第三章の「広告の愉しみ」は時刻表の広告から時代を読みとくが、楽しく、高尚な内容だ。

管理人も古い時刻表コレクターであり、そこから時代を垣間見るのが好きである。拙ブログでも古い北海道時刻表をベースに、「激動の1968年、交通公社時刻表で北海道を旅する」と題したものを書いたが今でも多くのアクセスをいただく。また、内田百聞氏と宮脇俊三氏を尊敬しているあたりも共通項なので親近感を覚える。


実は出版元の亜璃西社さんとは親しくさせて頂いているが、編集のI氏より、昨年夏、初めての鉄道もので、この書籍が売れるかどうか相談を受けた。内容を聞いて、似たような趣味の人はいるのだなあと思ったが、詳しく知るうちに24才の若者の方が遥かに筋金入りで、思い入れのレベルが違うことがわかり、直感的に「いけるのでは」と思った。

鉄道書籍のレベルが落ちている昨今、『北海道化石としての時刻表』には、「北海道」・「時刻表」・「産業考古学(鉄道文化史)」と好きな人にはたまらないファクターが三拍子詰まっており、一石を投じることができる。これは道外をターゲットにやれば売れますよと答えた。

聞くところによると、神保町の「書泉グランデ」では追加注文、池袋のジュンク堂では品切れらしい。管理人の勘が外れなかったので、少しほっとしているところだ。

2009年3月発行 1,600円

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2008年06月09日掲載

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